本とひと・地域・ビジネスの未来を探究する「本のある場所研究会」メルマガ#1

本・書店・出版に関わる方々と経験や知見を分かち合いながら、本とひと・地域・ビジネスの未来を探究し、創造していきたいと思います。
『イコール』調査研究部 2024.11.05
誰でも

「本のある場所研究会」theLetterにご登録いただいたみなさまへ

こんにちは。本のある場所研究会です。

theLetterのメールマガジンにご登録いただきありがとうございます。

アカウント自体は6月から作成していたのですが、有志数名でのまだまだ小さな研究会で、なかなか手が回らず、気づけば11月になってしまいました…。

早くからご登録してくださったみなさま、すみません。

今月から気を取り直して(そしてあまり気負いすぎず)月に1〜2回のペースで配信していきたいと思います。

初回はご挨拶にかえて、当研究会の活動紹介と、現在主に取り組んでいる「シェア書店」の調査研究についてご紹介いたします。ぜひ、ご感想をお聞かせください。

本のある場所研究会

メールアドレス BookResearch@equal-mag.jp

(執筆:鈴木悠平

1. 多様化し変容しながらも続いていく、「本のある場所」

町の本屋が減っているという記事がしばしば流れてきます。実際に数として減ってもいます。また、出版・流通業界の構造的課題や限界についても論じられて久しいです。

書店の消失や出版文化の危機が語られる一方で、シェア書店、シェア図書館、ブックカフェといった新しい業態で「本」と出会える場が町の中に新たにつくられたり、コミケ・文フリが年々活況を呈し、「本」を自らつくって販売する個人が増えてきたりといった現象も見られます。

こうした「本」にまつわる新しい動きが、これからどうなっていくのか、一過性のブームで終わるのか、形を変えながら持続していくのかはわかりません。これらがそのまま、減っていく「町の本屋」の代替になったり、「出版不況(?)」をひっくり返してくれたりといった単純で都合の良い話でもないでしょう。

ただ、どれだけ社会や産業の構造が変わり、人々のコンテンツ受発信方法や購買行動も変わっていったとしても、「本」と「本のある場所」はそう簡単になくなりはしない、形や方法を変えながらも続いていくであろうことは、確かだと思います。

もちろん「本」と「本のある場所」がなにもしないで維持されるわけではありません。このメルマガを読んでくださっている方を含め、全国各地、世界各地で、さまざまな方法、立場から、「本」と関わり、「本」を通して価値を生み出そうとしている人たちが、時代の変化に対応しながら試行錯誤、創意工夫を重ねておられることと思います。

本・書店・出版に関わり、思いを持って活動されている方々と経験や知見を分かち合いながら、本とひと・地域・ビジネスの未来を探究し、創造していきたい。そんな思いで「本のある場所研究会」と名付けて活動を始めました。

旗振りは、70年代に読者投稿型雑誌『ロッキング・オン』そして『ポンプ』を創刊して以来、「参加型メディア一筋」の編集者・橘川幸夫さんです。

今年4月に『イコール』というコミュニティ生成型の紙の雑誌を創刊し、「深呼吸書店」という屋号で各地のシェア書店に出店しながら、仲間たちと「実験」を続けています。

橘川さんの私塾「深呼吸学部」の有志が研究会メンバーとなって、まずは全国に広がり「シェア書店(シェア型書店)」の調査研究を進めています。

…とはいえ、まだまだ始まったばかりの、非常に小規模な(言い換えれば手が足りていない)研究会です。参加してくださる方は随時募集中ですので、なにか手伝える、一緒にやりたい、という方はぜひお気軽にご連絡ください。

いまこのメルマガを書いている私(鈴木悠平)は、高円寺のシェア書店「本店・本屋の実験室」で深呼吸書店の担当として、店番に入ったり、お店の運営に関わったりしています。月に3,4回はお店にいるので、遊びにいらしてください。みなさんのお住まいの地域やお店にもいつか伺えればと思います。

2. 全国シェア書店調査研究 進捗報告

毎月、全国各地で次々とシェア書店が新規開店しています。このトレンドがどこまで、どの程度続くかはわかりませんが、当研究会でも随時情報収集し、店舗情報をリストアップしていきます。

以下のnoteでは、都道府県別に見出しをつくり、店舗名、住所、WebサイトやSNSといった公開・公式情報をまとめています。本日時点で、合計90店舗となりました。

2024年5月から、シェア書店オーナーさん宛に、店舗Webサイト記載の問い合わせフォームやメールアドレスから連絡をし、調査研究の趣旨を説明した上で、Googleフォー ムでのアンケート調査への回答協力を依頼しました。

9月に発売した雑誌『イコール』2号では、2024年6月末時点で回答を得られた24店舗のデータをもとに調査研究の中間報告記事を掲載しています。

従来の書店と違って、網羅的・体系的なデータを集め、整理し、共有する仕組みや業界団体のようなものがないのがシェア書店で(それゆえの自由や多様性といった魅力もあります)、当研究会がその役割を担うことに一定の意義はあるのではないかと、手前味噌ですが、みなさんの反響から手応えを感じています。

一方で、アンケート調査で定量データと短文の定性回答を集めるだけでは、全体の傾向や課題を表層的に掴むことしかできず、これを続けるだけでは、シェア書店に関わり、事業とコミュニティをより良くしていきたい、続けていきたいという担い手の方たちの切実で本質的なニーズには十分に応えられないとも感じています。

地域の特徴や人口規模、課題や運営形態など、いくつかの切り口を設けて個別または小グループでのフォーカス・インタビューを実施したり、それぞれの地域・店舗で培ったノウハウや事例を共有・発表する研究会を開いたりして、より掘り下げた調査をしていくことが次のステップだと考えています。

調査の過程で見えてきたことを、このthaLetterのメルマガをはじめ、各種媒体で少しずつシェアしていきながら、最終的には一冊の本や報告書といった形にまとめて、シェア書店に関わる人がそれぞれに参照、活用できるような共有知を残したいと思います。

先日10月24日には、高円寺の「本店・本屋の実験室」&Zoomにて以下のような研究会を開きました。

私が作成した司会進行スライド(調査の中間報告を含んでいます)をSlideshareにアップしましたので、よろしければご覧ください。イベント自体のレポート記事も追って作成予定です。

このような形で、少しずつ、みなさんと一緒につくっていければと思いますので、ぜひアイデアをいただけると幸いです。

3. 人生に、余白を。本と人が交わる実験場NoDo_ ― シェア書店インタビュー#1

調査研究を進めながら、各地のシェア書店さんのコンセプトや運営方法をご紹介するインタビュー記事をつくっていきたいと思っています。

第1弾は、東京・目黒区に今年の4月に開業した「NoDo_」店主の深澤弘至さん、副店主の深澤みどりさんへのインタビューです。

noteに公開しているので、すでに読んでくださった方もおられると思いますが、まだの方はぜひどうぞ。

また、9月に発売した雑誌『イコール』2号では、NoDo_さんに加えて、以下4店舗の店主さんへのインタビューを掲載しています。

100人の本屋さん(東京・世田谷区)

カモスク(山形県・小国町)

ナマケモノ書店(宮城県・栗原市)

話せる本屋とまり木(神奈川県・茅ヶ崎市)

これからも地域や運営形態の多様性を意識しながら、少しずつ色んなシェア書店オーナーさん、棚主さんにお話をお聞きしていきたいと思っていますが、研究会の現メンバーだけではなかなかリソースが足りておらずで…各地にお住まいの読者のみなさんと協働して、なにかうまい工夫ができたらなぁと思っています。

(このお店に話を聞きに行きたい!という方がいたら、この指止まれ形式で、その方がインタビュアーとなり、研究会メンバーや読者有志で企画や文字起こし、編集などをリモート分担する即席チームをつくるなど)

インタビューしたい・されたい、なにか手伝えるよ、という方、いつでもご連絡ください。

4. 「本のある場所」イベント情報

研究会メンバーが企画・登壇するイベントや、研究会の活動のなかでお会いした方々が企画・発信されているイベントのなかから、メルマガ配信日に近い日付のものを毎号いくつかご案内します。

みなさんからのイベント情報のご提供も大歓迎です。メルマガ配信日にタイミングが合うものは、可能な限りここでご案内したいと思います。メルマガに収録できない場合は、研究会のXでポスト・リポストするなど、微力ながらご紹介できればと思います。

■11月7日(木)図書館総合展にてシェア書店調査研究発表

本日11月5日から7日まで、パシフィコ横浜にて全国の図書館関係者、出版関係者が集まる「図書館総合展」が開催されます。

最終日の11月7日(木)17:00 - 17:45に、「書店減少は書籍流通革命の始まりか?~急増するシェア書店全国調査結果発表~」というイベントで、研究会の活動報告を行います。シェア書店全国調査からわかったことや今後の課題と展望お話しながら、図書館との連携可能性などについて考えられればと思っています。

また、会期3日を通して、会場内では「カーリル」さんのブースで、シェア型図書館を再現するという企画展示が行われています。私(鈴木)も最終日の7日午後からブースに滞在する予定です。ご都合のつく方はぜひ遊びにいらしてください。

図書館総合展での「カーリル」さんのブース。シェア型図書館を再現するという企画展示です。

図書館総合展での「カーリル」さんのブース。シェア型図書館を再現するという企画展示です。

奈良のシェア書店ふうせんかずらさん主催の「無人・シェア型書店のビジネスを考える勉強会」

先日のシェア書店研究会にも参加してくださった、奈良県の無人&シェア型書店ふうせんかずらさんが主催の勉強会です。

無人書店やシェア型書店の新しいビジネスモデルの運営手法や収益化、開発準備中の書店専用アプリを紹介してくださるとのこと、11/16(土)〜全3回参加無料です!

5. 「本のある場所」注目トピック共有

日頃、GoogleアラートやSNSでチェックしている、書店や図書館、出版や流通に関するWeb記事のなかから、いくつかピックアップしてみなさんにご共有します。

タイトルと記事リンク、ほんの1行2行のコメント程度ですが、ご参考にしていただければ幸いです。

小型書店の開業をサポート 日本中の「本屋をやりたい人」へ 書店開業パッケージ『HONYAL』(ホンヤル)10月17日よりサービス開始 | 株式会社トーハン

トーハンの少額取次サービスがスタート。プレスリリースでは「独立系書店」の存在にも触れられています。

取次・書店ルートが先細っていく中、なぜ中小出版社はまだ電子出版に消極的なのか?【HON-CF2024レポート】

紙版と電子版の制作フローやコストの話など、事例やデータを通して詳しくお話されています。

freeeが手掛ける「透明書店」 収益をすべてネットで公開中:日経ビジネス電子版

クラウド型の会計ソフトを運営するfreee(フリー)が東京・蔵前で開いた「透明書店」は、新刊、リトルプレス、棚貸し(シェア型)の3種複合業態の書店です。初期費用から月ごとの売り上げ、利益などをその名の通り“透明”に開示するというコンセプトで運営しています。

【代官山 蔦屋書店】本の感動をシェアする、お客様参加型の展示「かけがえのない、一冊。展」を12/12(木)より開催

「心の支えになっている言葉と出会えた一冊」、または「人生を突き動かす感動を与えてくれた一冊」を11/10まで募集しています。

【本の要約サービス「flier」】書店員がいなくても“出会うべき本”を見つける手助けに!話題の完全無人書店「ほんたす ためいけ 溜池山王メトロピア店」で本の要約サービス「flier」フェアがスタート!

本の要約サービスと無人書店のコラボレーション企画です。

"思い出”がつづられた本を交換する本屋「思い出書店」、2024年度グッドデザイン賞を受賞 | 株式会社スタジオユリグラフ

「交換拠点に設置された帯に、持ちこんだ本の思い出を書き、QRコードからシステムに登録。その本を寄付または拠点の他の本と交換できる」サービスです。

ということで、本のある場所研究会のtheLetter配信第1号でした。配信ペースや内容、1回の分量など調整しながら続けていきたいと思います。

ぜひお気軽に、ご感想やご提案、こんなものが読みたいというリクエストなどいただければ幸いです。

研究会の各種アカウントやメールアドレス、theLetter上でのコメント・返信機能、中の人への個別連絡など、どこからご連絡いただいても構いません。

・noteやtheLetterにコラムや書評などを書きたい・書いてもいいよという方

・シェア書店をはじめ「本のある場所」の面白い人や活動のインタビューをしたい・できる、企画や文字起こしや編集を担当したい・できるという方

・うちのお店や活動を見に来てほしい、インタビューしてほしい、こんなことを相談したい、という担い手の方

・調査研究に関わりたい、企画、依頼、データ収集、分析といった運営事務を手伝えるよという方

などなど…なにか企画をご一緒したり、手伝ったりしてくださる方がおられましたら、とっても助かります&嬉しいです!ぜひご連絡ください。

本のある場所研究会(担当 鈴木悠平)

メールアドレス BookResearch@equal-mag.jp

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